就労継続支援A型事業所の経営改善
企業を取り巻く社会的課題
昨今、人手不足で企業経営や職場環境に大きな影響を及ぼしています。これまで、日本政府としても、女性人材や外国人材の活用、さらにはDX推進、AI活用など様々な政策を打ち出しているものの、なかなか改善ができていないのが現状です。また、精神疾患を患う障がい者が増加傾向にあり、企業に課せられた法定雇用率も上昇傾向となっています。
人材不足の観点、ならびに社会的責任(CSR)の観点で障がい者を活用する事が、今後の企業の競争優位性の一つとなっています。
就労継続支援A型事業所の現状
障がい者の労働市場への復帰を目的とした福祉制度に就労系の福祉サービスがあり、その中で障がい者と雇用契約を結び実務に近い就業訓練を行い、一般就労への架け橋を担う福祉サービスに「就労継続支援A型事業」があります。
令和6年4月の介護報酬の見直しにより、就労継続支援A型事業所の生産活動収支が厳格化されたことにより、半年間で休廃業が加速し、同時に障がい者の大量解雇の問題が取沙汰されています。
福祉制度の再考
障がい者の大量解雇問題を受け、令和6年10月28日付けで厚生労働省から各自治体の障害保健福祉主管部(局)宛てに『A型事業所廃止等に係る対応の留意事項等について』の事務連絡が行われました。内容は「1.事業者責務の更なる徹底」、「2.利用者の受入先調整に係る指定権者と支給決定権者による連携した支援」、「3.都道府県労働局及び公共職業安定所との連携」、「4.A型事業所の経営に係る引き続きの支援」に関する通達となっています。
我々、中小企業診断士として、特に気になる項目は「4.A型事業所の経営に係る引き続きの支援」で、指定権者において積極的なアウトリーチ支援に取り組むよう、示されています。
具体的には、事業所から提出された経営改善計画書等に基づく指導の徹底を行うと共に、①経営コンサルタント等による工賃向上計画などの個別支援等の推進、②障害者優先調達推進法の更なる推進、③中小企業庁が全国に設置しているよろず支援拠点の案内、などの支援制度の積極的な活用、周知する旨の内容となっています。
課題解決の視点
就労継続支援A型事業所の経営改善に際し、企業のリソースを整理、目指すべき福祉サービスの方向性を明確化して、単に就労継続支援A型事業所を休廃業するのではなく、就労移行支援、就労定着支援、就労継続支援B型、今後導入予定の就労選択支援、その他の福祉サービスの事業ポートフォリオを戦略的に組み立て、事業を推進する必要があると考えています。
また、人材不足で悩む企業とも積極的に連携し、双方の課題解決に向けた取り組みを行うことが重要であると思います。
効果・成果
中小企業診断士は日常的に企業の環境分析、人的資本分析、マーケット分析、財務分析を行い戦略立案の支援、並びにモニタリングを行っています。また、業務改善を通じて、何らかの障がいを持つ方でも遂行可能な業務プロセスの見直し提案を行う事で、福祉事業と企業との連携を推進することが可能となります。